八重山諸島・宮古諸島9島観光&恵子美術館への旅 [1]

   
  河津みのる(詩人・エッセイスト)

[A]八重山諸島観光
       
                                                                       
■「西表島」「由布島」観光へ 

 高度を下げた機窓から石垣島の海が見えてきた。
 海面が明るく青い。藍色や黒っぽくまだらなところもある。
 海水が透き通っているようだ。青が明るいのは、海底が浅い白砂なのか、サンゴ礁か、藍色は深いところか。いや、雲間からもれる陽光の影響だろうか。    
 沖縄の海はきれいだ。石垣港からは、その青い海面を飛ぶような高速船で三O分ほどで西表島についた。
バスが走りだすと電柱の上に、カンムリワシがちょこんと宿っているのを運転手が教えてくれた。
 「野生に生きるカンムリワシに出会えるなんて」と思っていたら、ガイド嬢が「雨が止んだばかり、めったにない幸運です」と。

仲間川のマングローブ林
 
 仲間川につくと、河口に近くゆるやかな流れだ。その川面へテント張り屋根のボートでくりだす。
 両岸にはマングローブが黄緑色の枝葉をふくらませている。原始そのままの群生だ。気分がしだいにリラックスしてくる。
 近づくと水面ちかくに茶色の根を、蛸足のように水面下にのばしている。真水と海水のいりまじった、干満のあるこの辺には巨大なシジミ貝などが生息しているという。見ほれているとはげしい雨がおそってきた。
 さらに、仲間川をさかのぼっていく。上流で岸におりて林に入っていくと、昆布のような巨大な根が地上におどり出ている。
 樹齢四OO年サキシマスオーの木だ。そばにゆくと、その板状の根が人間の背丈をこえて、幹につらなり、その上に枝をひろげ緑葉を繁らせている。亜熱帯ならではの奇妙な木との出会いだ。

サキシマスオーの木の前に立つ河津みのる氏

 遠あさの海をゆっくりと屋根つきの牛車で由布島へわたる。"小魚よそこのけそこのけ牛車が通る"といったところか。
 かってインドから農耕用につれてきたという逞しい体つきの水牛は、鼻にロープを付け、尻っぽをつかんで歩みをせかされている。
 由布島は白い砂浜に、トックリヤシが緑葉をひろげて出迎えてくれた。周囲二・一五キロ、海抜一・五メートルの小さな島に入っていくと、地面にクジャクやアヒルが放し飼いされている。
 ブーゲンビリアやハイビスカス、ノアサガオなどが咲き、ガジュマルが簾のように気根を垂らしている。
 名の知らぬ蝶が行く先をみちびく。琉球イノシシが牧場に遊んでいる。
 春三月、半袖姿に涼風をうけながらの快感で小道をそぞろ歩く。いわば、由布島全体が"亜熱帯植物園"といった情緒がたっぷりだ。
 牛車で西表島にもどると、海辺で女性たちが声をあげている。
マングローブの根がむきだしになっているところだ。あちこちに小さな水たまりができていて、その付近で赤い花をひろっているのだった。
 足をふみいれると、何かがぴょこんとはねた。
 そこに近づくと、また五Oセンチほどはねて、焦げ茶色の小石のわきに隠れた。保護色で見分けがつきにくいが、そっと近づくとハゼのようだ。
 捕まえようとすると、ぴょこんぴょこんと跳ね、すばしこくおよぎ、すぐに隠れてしまう。
 勢いをつけて近づくと、足元から何匹も跳ねては逃げていく。
 自然はいいものだ。それに海辺が岩や砂浜ではなく、マングローブの林だなんて。ふと、童心にとりつかれた。
 足元のとんがり帽子の形をした小石を手にすると、口殻のついた貝だった。あちこちに、いくつもころがっている。
 大きめを手にとって馭者にきくと、「ウミニナ、巻き貝の一種です」と、教えてくれた。
 
水牛と一緒に記念写真の河津みのる氏

 馭者の持つロープを鼻につけられた水牛の肌をみると、毛が少なく、表皮が厚いようだ。
 すぐ先に池があり、一頭が水につかったまま、じっと動かずにつながれている。
 牛舎では、数頭が座ったまま、干し草を食べている。牛は座ってゆっくりと反芻はするものの、ふつう立ったまま食べる。
 座ったまま食べている水牛を不思議な目つきで見ていると、とつぜん大きな角をふりかざし、威嚇の鳴き声をあげたので、思わず後ずさりしてしまった。
 石垣港につき、西表島方面をみると、夕日が輝いている。
 空気が澄んでいるからか、溶けて、つくりだされたばかりの金色の輝きはうっとりするほどだ。
 沖縄では、太陽が沈む西を「入り」というそうだ。西表島は、イリオモテシマと読むのだ。
 石垣港からホテルまでは、女性運転手だった。三十代か、大型バスのハンドルさばきが見事だ。
 車すくなし、信号すくなしの道、「海びらき」へ誘う横幕を見、海の青さに負けまいとする緑葉の木や花々の間を走っていく。
 この女性運転手、ホテルにつくとバスの横腹から客たちの大きな荷物をいとも軽げに出す逞しさ。サトウキビや漁業のほか、自然美にめぐまれた観光に生きる島人の心意気をかいまみた感じだ。
 
ハイビスカスの花の前で記念写真の河津氏夫人
 
 ホテルの通路には植物園があり、前庭の芝生は緑で、あちこちにハイビスカスが赤く咲いている。冷蔵庫はお客を信頼しきった自主申告制で、朝食はバイキングで和食の美味。おかず類も多く、胃袋じょうぶの自分はてんこもり二杯をたちまちのうちにたいらげてしまった。

        竹富島観光へ