「恵子美術館」関連のエッセイ、論評など


小さな美術館の相乗効果

                         下地 均(「菊之露酒造」営業部長)

             「沖縄タイムス」朝刊(1999912)[連載コラム・オフィスの窓から]

 一九九九年の元日、平良市に「恵子美術館」がオープンした。
平良市出身の画家、垣花恵子さんの個人美術館であり、県内初の現代美術常設展示館である。一見、武骨にも見えるその外観は、よく見ると建物全体が顔面の様相で、なんともユーモラスでシュールである。その存在は、平良市の景観の中でもとりわけ異彩を放っている。
 地元の子供たちや絵画に興味のある方、または観光客などに親しまれ、今やすっかり街のなじみの存在である。私も開館直後に足を運び、創造の熱いエネルギーに深い感動を体験した。その日から美術館は私の一番の、安らぎと憩いの場となり、何度となく通っているのである。
 全国でも作者存命中の個人美術館の設立はごくまれで、美術館の設立に伴う関係者の困難は想像に難くない。設立の趣旨に賛同した美術文化協会の有志の寄贈作品の多さも、周りの期待の大きさを物語り、来館者からするとその展示作品の多様性は大きな魅力である。
 この夏休みの間も、子供たちの来館が後を絶たず、その子供たちの感動の声の多くは、美術館の機関誌である「すけっちぶっく」(三号から書籍扱いで全国発売となった)に掲載され、各界に注目されている。子供たちの真っすぐな、みずみずしい感性に私も驚かされる。絵を見ることで子供たちが触発され、表現することに目覚め、将来の芸術家の誕生となればと、想像するだけでも楽しい。
 美術館のある街。なんともすてきな響きではないか。何かとせわしなく、あくせくと時間に追われる日常の中、美術館の存在により、街の景観や空気がゆったりと感じられるのはなぜだろう。それにしてもこの美術館の存在意義、地域活性化への貢献度の大きさを考えるに、なぜ独立採算の個人美術館なのだろうか。
 「宮古島にこんな質の高い美術館があるなんて」、本土からの観光客の驚きの声も聞く。他府県では「美術館やギャラリーでの町おこし」の声も耳にする。  この商店街の中の小さな美術館の、観光客誘致への影響や教育的情操効果、芸術文化の発信地としての意義など、多方面にわたる相乗効果は計り知れない。魅力に満ちた街、潤いある商店街とはなにか。「恵子美術館」のオープンをきっかけに考えてみたい。