「読売新聞」那覇支局長・井川聡記者の取材により、「読売新聞・西部本社版」夕刊一面(12月8日)に掲載された「恵子美術館」の記事のデジタル版が、「那覇支局ホームページ」に公開されておりましたが、約1ヶ月間の記事公開が終了しましたので、下記ページを「恵子美術館ホームページ」に転載することをお願いし、了解を得ましたので下記に転載させていただきます
「読売新聞」地域情報とニュース/沖縄(那覇支局ホームページ)


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宮古島・日本最南端の美術館はシュール大作がずらり




これはびっくり天井画

 沖縄本島から南西へ約三百キロの宮古島。異次元空間への入り口は、島の中心部・平良市下里通りの一角にあった。鉄筋二階建てのビル。正面から見ると、どこにも窓がない。壁面は上半分が青く塗られ、下半分には不思議な男の顔を描いたタイルがびっしりとはめ込まれている。まるで大きな「びっくり箱」だ。扉を開けて、中に入ると――。

     

 額縁が足元に置かれていた。のぞき込む。「ん?」。絵ではない。鏡だ。鏡の中に絵が映っている。はっとして、のけぞるように見上げる。天井画だ。「へぇー」と感心した瞬間、かぶっていた帽子がすとん、と床に落ちた。

 「帽子落としの絵です」  のりの利いたシャツを着たバーテンダーのような男性が、にやり、と笑った。

 男性は「広報担当」の名刺を差し出し、軽くおじぎをして言った。

 「ようこそ恵子美術館へ」

     



鮮やかなブルーの外観

「恵子美術館」は一九九八年一月一日、日本最南端の私設美術館としてオープンした。主宰するのは、宮古島出身で千葉県船橋市在住の画家、垣花恵子さん(45)。

 「島の子供たちに本物と出会える場所を提供したかったのです。実家が道路拡幅工事で建て替えることになり、それを機に思い切って美術館をつくりました」。思いが通じ、今、来館者の多くは、怖いもの見たさの小中学生だ。

 展示作品は、シュルレアリスム(超現実)・幻想美術の絵画と彫刻約六十点。収蔵品はその倍ほどあり、随時入れ替えている。美術文化協会所属作家の代表作が中心だ。

 


自作の絵の前に立つ垣花恵子さん

 圧巻は恵子さんの作品群。目に持病があり、刺激の強い油絵の具が使えないため、和紙をしわくちゃにしてキャンバス代わりにし、クレヨンやアクリル絵の具で描く。

 ごろんと転がる男の首、宙に浮く目玉……。それが百号、百五十号といった大作だけに、度肝を抜く。

 「夜、怖くて電気を消しに行けない、もっときれいにな絵を描きなさい、と母にしかられています」と恵子さん。しかし、その作品は、純真で、残酷で、シュールな子供たちの心を捕らえて離さない。

 来館者アンケートをめくると――。

 「気持ち悪い、絶対入りたくない、と思っていたのに、なぜか足が止まってしまった」(中三女子)「絵が動くんじゃないかと真剣に見た。全部の絵の視線を感じた」(小六女子)「体が浮きそう、フラフラする」(中二女子)

     

 館内は、写真撮影ok、作品を手で触ってもよい。そんな気軽さも人気の秘密だ。もはや単なる展示場ではない。地域の感動交流拠点となっている。

 「芸術は長い人生の中で、いつか支えになる時がある。どんな台風にも干ばつにも負けないガジュマルのように、地域に根を張った美術館を目指します」

 恵子さんはシュールな絵の前できりり、と表情を引き締めた。

(井川 聡)

 〓メモ〓 入館料は大人500円、高校生300円、中学生200円、小学生50円。小中高生は二回目以降無料。開館時間は午後1―6時、毎週水曜日と毎月7日休館。問い合わせは0980・73・0388。